ライブラリーについて

 

「奥多摩ブックフィールド」開設顛末記

どこかに本の置き場を作れないか、といったことを、同様の悩みを持っている方々に訴え続けていると、「まちライブラリー」提唱者の礒井純充さんが、宴席で「いい場所があるよ」との呟き。その一言を聞き逃すわけがなく、場所を訊くと「奥多摩の廃校」。早速、現場を見に行くことにした。
旧奥多摩町立小河内小学校で、2004年3月に廃校となった。都内に僅かしか残っていない築60年ほどのヒノキ造りの木造校舎。ダム建設に伴い、この場所に一九五七年に移転した。校庭には創立百周年記念碑が残る。場所は奥多摩駅からバスで30分ほど、目の前に「学校前」というバス停がある。青梅街道沿いの「峰谷橋」というバス停からも1キロ弱で歩ける距離。
校舎を目の前にして、「一目惚れ」。交通の便はよくないが、それを補って余りある建物の魅力があった。その場で、「やりましょう」と返事。この建物に礒井さんが着目したのが2011年3月10日。翌日に東日本大震災が起こった。その時点では町が管理していて、使用の自由度も低かったが、2013年11月より地元の「東京・森と市庭」の管理となり、可能性が拡がった。そこに、「まちライブラリー」を、との構想が持ち上がったが、立地の問題もあり、単独での実行には至らずにいた。そこで「どむか」の悩みを聞き、上述の「呟き」となったのだろう。こうして「まちライブラリー」と「どむか」のプロジェクト「奥多摩ブックフィールド」が立ち上がることになったのである。借主は法人でなければならないので、「まちライブラリー」に担ってもらった。それゆえ、正式名称は「山のまちライブラリー」だが、広く本を中心にした場を作り上げていきたいと思い、施設の「奥多摩フィールド」に「ブック」を加え、「奥多摩ブックフィールド」を併記することにした。
立ち上げの際には、「まちライブラリー」のつながりで文学者のマイクロライブラリー(現:専門家のマイクロライブラリー)の力徳裕子さんが加わった。同会は、戦後身銭を切って書籍を購入してきた世代の貴重な資料や蔵書を散逸させることなく、それら「知の集積」を活用できる場を作りたいとの思いで作られた。具体的なアクションとして、遺族から本を活用してほしいという申し出があり、若くして亡くなったドイツ文学研究者の蔵書約二千冊が、廃校に運び込まれた。「どむか」は芸術系の画集やサブカルや文学系の雑誌のバックナンバーなどの蔵書約千冊と、「本」に関わるオブジェなどを第一弾として持ち込んだ。
本の搬入に先立ち、床の雑巾がけ、学校中の本棚の運び込みなど、4回ほど準備のために足を運んだ。ドイツ文学者の2000冊は、2トントラック2台で運び込まれ、200以上の段ボール箱はバケツリレー方式で棚まで運んだ。以降、数回にわたり遺志を継ぐ研究者により、並びが整えられていった。
そして、2018年8月18日、奥多摩小河内の町おこし団体「Ogouchi Banban Company」が同校体育館で行う夏祭り「まちおこしモンスターフェス2018」開催日に合わせてお披露目会を開いた。募集に応じた2組を加え4組ほどで「一箱古本市」的なブックマーケットも開催。「どむか」や「まちライブラリー」関係者に、「フェス」参加者も加わり、賑やかな会となった。
まだ、定期的に開館できる体制が整っていない状態だが、奥多摩には本屋がなく、本に触れる施設も少ないと聞く。プライベートライブラリーではあるが、地元の役に立てればとも思う。広域から人が集うブックイベントなども出来たらよいな、とも夢想している。
(どむか記、「出版ニュース」10月上旬号掲載)

 

蔵書のご案内

特色ある奥多摩ブックフィールドの蔵書をご紹介いたします。

出版ニュース・アーカイブ

2020年3月に廃業した「出版ニュース社」所蔵の出版関連書籍、出版社社史、関連資料など約3500冊を収蔵。〈整理中・一部公開中〉 「出版ニュース社」:1941年に当時の取次店を国策により統合された日本出版配給株式会社が1948年にGHQにより閉鎖機関に指定されたため解散、1949年9月に取次会社東販(現在トーハン)、日販、大阪屋などが設立された。同年10月に出版ニュース社は日本出版配給株式会社の役員を中心に創立。当時出版界の共通の機関誌として雑誌『出版ニュース』と、出版界の記録『出版年鑑』を発行、50年から国立国会図書館法による出版物納本制度の納本事務を日本出版取次協会の委託により85年まで行った。出版界の中では、私企業ながら公的な刊行物を発行してきた。『出版年鑑』は2018年版で休刊、『出版ニュース』は2019年下旬号で休刊、同社は2020年3月末で廃業。

雑誌創刊号コレクション

1985年(28点)、1986年(142点)、1987年(88点)、1988年(117点)、1989年(100点)、1990年(142点)、1991年(157点)、1992年(154点)、1993年(116点)、1994年(16点)、1997年(197年)、1998年(36点)、1999年(64点)〈整理中〉

出版ニュース社 書架レイアウトと分類・冊数(2022.11 pdf)

専門家のマイクロライブラリー

「専門家の蔵書活用を考える会」メンバーによるドイツ文学を中心としたライブラリー。研究者をはじめとした専門家の書物や資料を蒐集・公開するなど、死蔵されていた書物に新しい命を与えるささやかな潤いの場をつくるべく活動中。奥多摩ブックフィールドには3000冊を超える蔵書を展開。〈公開中〉

アートブック・ライブラリー

展覧会図録、美術関連書籍など〈公開中〉

どむか屋根裏コレクション

本のカタチをしたオブジェ・パッケージ、本を持っているオブジェなど、約100点以上〈公開中〉

 

タイトルとURLをコピーしました